赤外線学習リモコンの信号定義データの合成/NECフォーマット編

はじめに

IRKitやKURO-RS、クロッサム2+などのプログラマブルな学習リモコンの信号データを、リモコン同士ツノつき合わせて学習させるのではなく、PC上で理想的な波形に合成するためのノウハウです。

信号データが合成できると、以下のようなメリットが期待できます。

  • なまっていない、きれいな信号が出せるようになるので、機器の反応が良くなる。
  • いつでも欲しいときにデータが合成できるので、学習したデータの保存に気を使わなくてもよくなる。
  • 機器付属のリモコンでは送れない、未知のコマンドを探求できる(笑)。

このページではNECフォーマットを取り上げます (動作確認は東芝製DVD/HDDレコーダー [RD-XS30] で行ないました)。

リモコン信号の詳細

「NECフォーマット」と呼ばれているもの。

フォーマット

+---------------------------------------------------------------------
| リーダー部 | データ部          | トレーラー部 | リピートコード | ...
+---------------------------------------------------------------------

リーダー部

ON(16T)→OFF(8T)
Tは(9/16)ms。

データ部

4バイト (32 bit) の送信データ。
データ「0」は ON(1T)→OFF(1T)
データ「1」は ON(1T)→OFF(3T)

なお、データの内容は

  • 最初の2バイトがカスタムコード (ベンダー/機器の識別)
  • 3バイト目がデータコード (コマンド等)
  • 4バイト目が3バイト目の補数 (チェック用)

である (LSB first)。コードの具体的な値は後述。

トレーラー部

ON(1T)→OFF(nnT)
nnは、リーダー+データ+トレーラーの合計が192T (108ms)になるように決める。

リピートコード

リモコンのボタンを押している間、出続けるコード。
ON(16T)→OFF(4T)→ON(1T)→OFF(171T)

キャリア周波数

赤外線LEDの発光時 (ON時) の点滅周波数。38kHz。

クロッサム2+用信号定義データへの変換方法

データ形式

NECフォーマットのクロッサム2+用信号定義データは以下のようになる。
00            ; おまじない。
06            ; 信号波形定義の数。
                ひと組の波形定義で「ON→OFF→」の一周期分を定義する。
21            ; キャリア周波数を決める分周比
                 [2.5MHz/38kHz/2=32.9≒0x21]。
              ; --- ここから信号波形定義 ---
7e0500 7e0500 ; データ「0」の波形。ON(1T)→ON(1T)、すなわち
                ONが0x00057eクロック継続したあとOFFが0x00057eクロック継続
                 [1T=(9/16)ms*2.5MHz=1406.25=0x57e]。
7e0500 7a1000 ; データ「1」の波形。ON(1T)→OFF(3T)。
e45700 f22b00 ; リーダーの波形。ON(16T)→OFF(8T)。
7e0500 038601 ; トレーラーの波形。ON(1T)→OFF(nnT)。
e45700 f91500 ; リピートコードの波形その1。ON(16T)→OFF(4T)。
7e0500 54ab03 ; リピートコードの波形その1。ON(1T)→OFF(171T)。
              ; --- ここから送信信号の定義 ---
2             ; リーダー (波形「2」)
10100010      ; データ1バイト目 (0=波形「0」/1=波形「1」)
00111101      ; データ2バイト目
01001000      ; データ3バイト目
10110111      ; データ4バイト目 (3バイト目の補数)
3             ; トレーラー (波形「3」)
45            ; リピートコード (波形「45」)
fe02          ; 直前の2波形を永久に繰り返す、という制御コード。
                これにより、ボタンを押している間リピートコードの信号が出続ける。

サンプルコード

送信データをNECフォーマットにエンコードするperlのサンプルコードを示す。
#! /usr/bin/perl
sub b8 {
    local($_) = shift;
    return join("", reverse(split("", sprintf("%08b", $_))));
}
sub hh3 {
    local($_) = shift;
    return join("", (split("", sprintf("%06x", $_)))[4,5,2,3,0,1]);
}

# データはコマンド行引数に16進数×3バイトで与える
@data = map { hex($_) & 0xff } @ARGV[0..2];
$data[3] = 0xff - $data[2];    # 4バイト目は3バイト目の補数

# データを0/1列に変換
@data = map { b8($_) } @data;

# データ中の「0」「1」の数をかぞえる
$_ = join("", @data);
$n0 = tr/0/0/;
$n1 = tr/1/1/;

# 出力の作成
$t = 9 / 16 * 2500;                     # T=(9/16)ms
$f = int (2500 / 38 / 2 + 0.5);         # キャリア周波数=38kHz
$nn = 192 - 24 - $n0 * 2 - $n1 * 4 - 1; # トレーラー長の計算
$out = "00\n";
$out .= "06\n";
$out .= sprintf ("%02x\n", $f);
$out .= hh3(  1*$t)." ".hh3(  1*$t)."\n";
$out .= hh3(  1*$t)." ".hh3(  3*$t)."\n";
$out .= hh3( 16*$t)." ".hh3(  8*$t)."\n";
$out .= hh3(  1*$t)." ".hh3($nn*$t)."\n";
$out .= hh3( 16*$t)." ".hh3(  4*$t)."\n";
$out .= hh3(  1*$t)." ".hh3(171*$t)."\n";
$out .= "2\n";
foreach (@data) {
    $out .= $_."\n";
}
$out .= "3\n";
$out .= "45\n";
$out .= "fe02\n";

# ベタ書きにしたいとき (クロッサム・エクスプローラ風)
#$out =~ s/[^0-9a-f]//g;
#$out .= "\n";

# バイトごとに分かち書きしたいとき (Sweet Memories風)
#$out =~ s/[^0-9a-f]//g;
#$out =~ s/(..)/$&,/g;
#$out =~ s/.*/"$&"\n/;

print $out;

このようにして作成したデータを Sweet Memories 等によりクロッサム2+に転送する。

東芝製DVD/HDDレコーダー [RD-XS30] のリモコンコード

カスタムコード

45 bc

各ボタンの機能コード

コード ボタン コード ボタン
00 0 52 初期設定
01 1 53 クリア
02 2 55 ワンタッチリプレイ
03 3 56 ダビング
04 4 57 修正/削除
05 5 5a 表示
06 6 5b ワンタッチスキップ
07 7 5c 残量表示
08 8 5e ズーム
09 9 80 スキップ >>|
0d +10 84 スキップ |<<
0e サーチ/転送 88 スロー >|
0f 入力切替 8c スロー <|
11 オープン/クローズ 98 ピクチャーサーチ/頁 >>
12 電源 9a ピクチャーサーチ/頁 <<
13 再生 9d フレーム/値編集 >||
15 録画 9e フレーム/値編集 ||<
16 停止 a3 延長
17 一時停止 a7 録画モード
18 DVD b1 表示窓切替
19 HDD c0 カーソル ↑
1a タイムスリップ c4 カーソル →
1e チャンネル↑ c8 カーソル ↓
1f チャンネル↓ cc カーソル ←
40 録るナビ d0 トップメニュー
41 編集ナビ d1 メニュー
42 見るナビ d2 リターン
44 決定 d3 音声/音多
45 クイックメニュー d4 アングル
46 V-リモート d5 字幕
47 ライブラリ d7 P in P
4a A d9 チャプター分割
4b B da タイムバー

Gコード予約

8単位のNECフォーマットのデータを連続的に送信 (リピートコードなし)。カスタムコード「45 b1」のヘッダのあとに、「45 b2」のデータ列が続く。詳細は以下の例を参照。
45 b1 08 f7  ; ヘッダ
45 b2 99 66  ; Gコード「99502」
45 b2 50 af  ; ・8桁のGコードを左詰めで2桁ずつ
45 b2 2f d0  ; ・余分な桁には「f」を詰める
45 b2 ff 00  ;
45 b2 fc 03  ; 録画先。DVDのとき「fc」、HDDのとき「fe」
45 b2 00 ff  ; いつも「00」
45 b2 00 ff  ; 録画モード。SPのとき「00」、LPのとき「02」

改版履歴

Ver 1.0: 2004/1/22 - クロッサム2+向けに執筆
Ver 1.1: 2014/11/24 - IRKit、KURO-RS/PC-OP-RS1向けに加筆 (家製協のみ)、信号解析のページを追加

本稿の内容は、独自の調査・解析の結果にもとづくものであり、内容の正確性については保証いたしません。自己責任にてご利用ください。